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2017年11月8日 更新

太陽光発電O&M業界「6つの問題」(2)~設置会社・O&M会社・販売店間でトラブルになる、曖昧な責任分界点

O&M業界に起こっている6つの問題をとりあげていくシリーズの第2弾。異常が起こる前に予防する予防保全の重要性と、設置に関わる関係者が多いからこそ起こる責任未分化の問題についてとりあげていきます。

O&M japan編集部
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太陽光発電O&M業界「6つの問題」(2)~設置会社・O&M会社・販売店間でトラブルになる、曖昧な責任分界点
本記事は、2017年6月8日に開催された太陽光発電に関するカンファレンス「ソーラーアセットマネジメントアジア(主催:ソーラープラザ)」のセッションの内容をもとに編集・構成しています。今回の記事ではO&M業界6つの問題のうち「3.予防保全の欠如」と「4.責任分界点が不明確」について説明します。
<セッション「日本のO&M市場の概要」/話者:O&Mjapan編集長・清水拓也>

O&Mサービスプロバイダの「6つの問題」

ここ数年、太陽光発電業界では、O&Mの重要性が増してくるなかで、ビジネス領域の拡大、他業種からの参入などが多く起こってきました。しかしO&Mは、まだ産業としての歴史が浅く、様々な業界としての基準が確立されておらず、大きく6つの問題が起こっています。

今回の記事では、そのうち「3.予防保全の欠如」と「4.責任分界点が不明確」の問題について説明します。
「1.ビジネスモデルの横行」「2.技術者不足」の問題については前回記事をご覧ください。

「予防保全の欠如」。予防保全こそO&Mの重要な領域

現在のO&Mで提供されているサービス内容の大半は、何か異常があった場合の「事後対応」ですが、実は「予防保全」さえできていればそうした対応自体がある程度軽減できます。O&Mは元々「予防→認識→復旧→維持」すべてを含む概念なのです。

たとえば遠隔監視でデータ異常があって駆けつけるのは、一見「未然」の行動のように見えますが、データの異常が起こっている、すなわち何らかのトラブル事象が起こってしまっているので「事後」の対応でしかありません。そのデータ異常が起こる前に見つける未然防止が実はとても重要です。
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トラブルを未然に防ぐための主な対応策は「点検」です。点検には竣工点検、定期点検がありますが、なかでも竣工時の検査はとても重要です。
運用開始時に正常なスタートを切れないと、トラブルが起きたとき初めから存在していた問題なのか、運用途中でおきた問題なのかがわからずに進んでしまいます。また発電を正常な状態でスタートしないと定期点検時に前回との比較もできず、運用レベルの判断が出来かねます。仮に無事に運用開始ができても施工状態がずさんであれば問題はすぐに発生してしまいます。じつはこの施工不備に関する問題が発電所では一番多く見られるのです。

例えばモジュールの固定金具のボルト/ナットの締め付けトルクを考えてみましょう。正常な数値で行われているかどうかを把握しているでしょうか?
正直、全てをトルクレンチで確認している業者はあまり多くありません。その証拠に運用開始から間もない状態でのモジュール飛散事故やはり起きています。この「締め付けトルクの確認」はまさに未然防止なのです。もちろんその後に定期確認も必須となります。

これらの問題等がなかなか改善されないのには事業者側には「とりあえず発電開始」、施工側には「しっかり施工したから大丈夫」と言う安直な心理が働くことがあります。前者は「欲」であり、後者は「過信」です。正しい運用を行うには根拠のある行動(未然対応)が不可欠で、同時に発電所の運用を行っていると言う大きな認識が大切なのです。

O&M事業を行っていく会社はある程度の発電事業者リスクを代わりに背負うことになりますので、事故を未然に防ぐ「予防保全」の意識を事業者に定着させるのも重要な役割となります。このあたりまえの意識の欠如こそがこの業界の課題かも知れません。実際に未然に事故を防げるケースは現在のところまだまだ多くありません。しかしできるだけ未然防止をすることの重要性を認識したいものです。
未然防止をしていくことが大事

未然防止をしていくことが大事

via USACE HQ via VisualHunt.com / CC BY

責任分界点の不明確さが残る業態

「責任分界点が不明確」という問題は、太陽光発電設備に様々な事業者が関わっていることに起因します。太陽光発電設備には、販売店、設置会社、O&M会社など、関わっている関係者は多く存在します。そのため、仮に設備で事故が起きた時には、何が問題だったかを追及していっても、責任所在があいまいになってしまうことが実は多いのです。
関わる関係者が多いと責任所在があいまいになる

関わる関係者が多いと責任所在があいまいになる

via U.S. Department of Energy via Visualhunt.com
背景には、発電設備が「建築物」なのか「電気工作物」なのか、問題に対してどの法令が適用され、どの省庁の管轄なのか、という点すらわかりにくい事情があります。太陽光発電の歴史がまだ浅く、ルール整備がなされる前に各地でどんどん設置が進んでしまったためです。もちろんある程度の法令や取り決めは存在しますが、それらを発電事業者や関係業者は認知していないことは少なくありません。この辺も利益に重きをおきすぎる業界の風潮とも言えます。

太陽光発電設備の製品の製造及び施工にも複数の会社が関わっています。架台部分、電気的部分、モジュール部分、パワーコンディショナーといったものが組み合わさって発電設備は成り立っています。どこかの製品に不具合が生じたとしても、原因を特定しきれず誰も責任を負わないといったことが少なからず出てきます。また太陽光設備は設置期間が長く、メーカーの保証期間の範囲を超えてから問題が発生することも起こり得ます。

たとえば設置後数年たって架台の構造事故が起こったときに、施工での問題なのか、メンテナンスの不備なのか、はたまた許容範囲を超えた天災なのか、または部品に起因するものなのか。原因が特定できない場合も多く、結果として責任が不明確となり、現場で困惑してしまう事態が実際に起こっているのです。この問題では発電事業者側がリスクを背負い損害を出す場面が多く、太陽光発電事業がとてもリスキーな事業と認識されがちです。正しい運用が行われていないだけのことでも、違う問題にすり替えられることもしばしばあります。


今後一層のガイドライン整備や法の改正などが期待されますが、今起こり得るトラブルをできるだけ減らしていくためにも、未然防止を含めたO&Mを考えて事業を進めていきたいものです。その為には発電事業者、O&M業者や他関係業者がそもそも発電事業への認識をあらためる必要があるのかもしれません。
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