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2017年1月18日 更新

【知られざる太陽光発電業界の“光と闇”・第1回】トラブル続出?「太陽光パネル保守問題」の真相に迫る!

近年、再生可能エネルギーの雄として脚光を浴びる「太陽光発電」。「屋根にパネルを付けるだけで手軽に稼げる」「余っている土地を利用した太陽光発電を投資対象に」と、気軽に始められるビジネスとしても注目を集めている。しかしここに来て、太陽光発電関連企業の倒産が急増しているとも言われる。太陽光発電業界はこれからどうなっていくのだろうか?(取材:biblion編集部)

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【知られざる太陽光発電業界の“光と闇”・第1回】トラブル続出?「太陽光パネル保守問題」の真相に迫る!
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国からも優遇されてきた太陽光発電事業

本連載では、太陽光発電業界が抱える諸問題に警鐘を鳴らしつつも、健全な業界発展のために独自の啓蒙活動を続ける、太陽光発電検査協会理事・技術顧問でO&M Japan編集長の清水拓也さんにお話をうかがう。第1回の今回は、太陽光発電の最新トレンドと、近年拡大しつつある新業態「O&M」(オペレーション・メンテナンス)について語っていただいた。(取材:biblion編集部)
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―まずは太陽光発電業界の最近の動向や現状について聞かせていただけますか?

皆さんご存知のように、もともと太陽光発電は単純に再生可能エネルギー事業の中の一つとして、風力発電、地熱発電、バイオマス発電など、新しいエネルギー源として研究・開発が進められてきました。

日本では1990年代初頭から住宅用太陽光発電の装置(ソーラーパネル)が本格的に販売されるようになり、徐々に普及してきたのですが、ソーラーパネルがごく普通に住宅の屋根などに頻繁に設置されるようになったのはここ5、6年のことですね。さらに一般の方にまで太陽光発電という言葉がごく当たり前のように浸透したのが、2012年にFIT(Feed-in Tariff:再エネ普及のため、電力会社に再エネで発電された電気を一定期間、固定価格で買い取ることを義務づけた制度)が施行されてから。つまりここ3、4年くらいの話だと思います。

太陽光発電がここに来て急速に普及、浸透したのはFITの影響だけでなく、同じ再生可能エネルギーの風力やバイオマスなどと比べて、仕組みも構造も一番シンプルで分かりやすいからです。少し言葉は悪いですが、素人さんにとってもかなり扱いやすいエネルギー事業ということです。

そうした理由もあって、企業も個人も積極的に太陽光発電の推進に努めてきましたし、国もあまり手がかからず広げやすかったので、さまざまな助成金や補助金、買取り価格の補填などの制度を導入し、非常に優遇された市場になっていったのです。こうして、もともとかなりニッチな市場だったところへ、個人も含めいろんな分野の企業や団体が一挙に流れ込んできた、というのがここ最近の太陽光発電市場の潮流ですね。
太陽光発電業界のビジネスニーズが広がっている

太陽光発電業界のビジネスニーズが広がっている

太陽光発電業界に吹きはじめた新たな風「O&M」

―なるほど。でもこのまま一気に太陽光発電事業の市場が拡大していくかと思いきや、ここに来てややブレーキがかかっているんですよね?

ブレーキというより、ここへ来てちょっと太陽光発電市場は少し落ち着きを見せてきた、という表現が正しいかもしれません。ブームがやや下火になったというか、行政としても、「他のエネルギー事業、バイオマスや水力や風力などにもっと予算を回そう。太陽光は軌道に乗ったみたいだから、長期運用は必要だけれどこれ以上無理に拡げる必要はない」と考えているのです。

ところが実際のところはどうかというと、やはり太陽光はエネルギー事業者さんにとっては一番やりやすい分野なので、皆さんまだまだ太陽光発電事業に力を入れているというのも事実です。他のエネルギー事業にはまだそこまで力が入っていないように見えますね。

ただ、太陽光発電によって作られた電力の買取り価格が下げられてしまったこともあり、やや市場拡大にかげりが見えてきたので、「太陽光発電の販売・設置事業などに替わる何か新しいマーケットはないのか?」ということで、今「O&M」(オペレーション・メンテナンス)つまり「太陽光発電装置の運転管理・保守点検」を行うセカンダリービジネスが、近年注目を集めているのです。

「太陽光パネルのメンテ不要」はウソだった!?

―メンテナンスを行うビジネスが拡がりを見せている、とのことですが、そもそも太陽光パネルってそんなにメンテナンスが必要なものなんですか?

一般的に「太陽光パネル」「ソーラーパネル」と言われているものは、我々の業界では「モジュール」(太陽光発電モジュール)と呼ばれていますが、現在国内でこのモジュールを生産・販売しているのは、大半が大手電機メーカーさんです。この分野では歴史の古いシャープをはじめ、東芝、三洋、パナソニック、三菱電機などですね。
こうした電気メーカーはもとより、販売・施工会社などがモジュールを販売するときに必ず言ってきた決まり文句があります。それは、「太陽光発電は、一度取り付けてしまえばあとはメンテナンスの必要はありません」、つまりメンテナンスフリーだということです。

確かに太陽光発電のモジュールは非常にシンプルな構造で、光が当たれば自動的に発電して、あとはその電力をパワーコンディショナーという機器で直流から交流に変換して、消費されるだけです。太陽光パネル自体には電源も付いておらずオンもオフもない。電源もないくらいシンプルな製品なので、「操作を誤って事故を起こすこともないし、保守点検、メンテナンスなどまったく必要ない」と頭にうえこまれてきたのです。しかし実際はそうではありませんでした。

―太陽光パネルの設置後にトラブルが発生するようになった、ということですか?

そういうことです。実際にモジュールを取り付けて何年かすると、焼損事故など様々なトラブルを起こすようになったのです。電源がないから、何かシステムにトラブルが発生したことが分かったとしても、すぐには止めることができない。こうしたトラブルが頻発、表面化してきたことによって、先ほどお話したように、太陽光モジュールのO&Mサービスに注目が集まってきたのです。

もう少し詳しく説明すると、太陽光モジュールの問題点、メンテナンスの重要性に光が当たるきっかけを作ったのは、とある行政法人の方でした。ちなみにこの行政法人は、国からの支援によって成り立つ太陽光を世の中に拡げていきましょう、といういわば太陽光推進派の団体です。
その行政法人のとある工学博士が、「太陽光は本当にメンテンスフリーなのか?」と疑問に思い調査した結果、次から次へといろんな不具合や欠陥が出てきた。そしてその調査結果をいろんな場所で発表しはじめたのです。

当初メーカー側はこうしたトラブルを否定していましたが、徐々に対応への取り組みを始めました。一方、民間でもボランティア団体や、この問題に対応するネットワークができ、地道な草の根活動が広がりました。そうした活動が5、6年続き、新聞などマスコミも注目しはじめて業界全体にも火がつき、このような経緯を経て、今ようやく太陽光発電事業におけるセカンダリーマーケットとしての「O&M」ビジネスが確立されてきたのです。
想定していなかった事故が多発

想定していなかった事故が多発

建築物? 電気工作物? あやふやな立ち位置の太陽光モジュール

―O&Mにおいて難しい点、今後の課題はどんなことですか?

太陽光モジュールと言っても、家の屋根などに取り付けるものから、“野立て”と言って地面に設置するものなど、取り付ける場所によって様々なタイプがあります。工場やビルの屋上などに付けたりもしますし、水の上に設置したり、いろいろなパターンがあります。

ここで太陽光モジュールの設置における難しい問題が発生してきます。それは「この設備が建築物なのか、または電気工作物なのか?」ということです。現行の法律ではそのあたりが明確に定義されておらず、どっちつかずの微妙な立ち位置の商品になってしまっている。様々なルールは日本電機工業会のガイドラインで縛るのか、JIS(日本工業規格)の規格で縛るのか、建築基準法で縛るのか、ということも含めて若干あいまいな状態です。

結局どの団体もこの件に関して問題視はしているのですが、決め手に欠けている。これはさすがにこのまま放置おいてはダメだと認識し、最近になってようやく行政やいろんな団体が本格的に動き始めた、といった状況です。

業界基準を一つに!これからの課題と目標

―今後、そうした問題に対して業界としてどのような取り組みをされていくのでしょうか?

太陽光発電装置を取り付けたい、と思っている企業や個人としては、やはり収益目的、投資対象としてこれをやろうとしているわけです。われわれの団体のように安全対策に重きを置いているものと、収益性を重視するものとでは微妙に異なるというか、そこにはある種のズレが生じます。そのズレをどう補正していくかが今後の課題であり、難しいところですね。
今、業界全体がそこのズレのすり合わせに取りかかり始めたところで、行政、研究者、機器メーカー、我々のような太陽光発電事業会社、その他さまざまな協会団体、それぞれが知恵を絞って解決策を考えているところです。

当然、いろんな人たちがそれぞれの立ち位置でものを言うので、温度差が生じて話がかみ合わなくなってきていていることも事実です。これをどこかで一つにして、きちんとした業界ルール、設備基準を作らないといけないのでしょうが、これがなかなか難しい。訪問販売でバリバリ太陽光発電システムを売られている営業マンの方が、研究所に足を運ぶかというと運ばないですよね。また研究施設やメーカーの開発部門の人が、町の販売店に顔を出して収益の話をするかというと、それも考えにくいかと思います。
そういう意味で、民間企業、協会団体など様々な立ち位置にいながら情報共有のできる私のような存在が、今必要とされているのかもしれません。
当初は私も、いろんな立場の人たちと係わっていればビジネス上有益な情報を得るのにはいいな、という程度の認識だったのですが、だんだんとこの業界に潜む問題を深刻に受け止めるようになりました。そして「このままいつまで待っていても何も変わらない」と気づいたとき、これまで自分が培ってきた知識やネットワークを使って何かこの業界に貢献できるのではないか? こうしたさまざまな問題を解決する助けになる活動ができないか? と考えはじめました。
こうして私は今、メーカーをはじめとする様々な業界関連の方々とともに、太陽光発電業界全体の意思統一を図り、健全な発展のベースとなるべき統一ルール・基準づくりを行うべく活動を行っています。
立場を超えた協調が求められている

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