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2017年5月24日 更新

多発する屋根上太陽光パネル転落事故防止の必需品「安全帯」の選び方

住宅屋根の上での施工・メンテナンス作業時に発生する作業員の転落事故が後を絶ちません。転落事故防止策として有効な「安全帯」装着の必要性と、適正な製品選びのポイントについて解説します。

O&M japan編集部
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多発する屋根上太陽光パネル転落事故防止の必需品「安全帯」の選び方
Photo by Wayne National Forest via Visualhunt.com / CC BY

多発する、屋根上作業時の落下事故

モジュールの施工時やメンテナンス作業時、作業員には様々な事故の危険が伴います。なかでも特に多い事故が、屋根の上での作業時に発生する、作業員の転落事故です。
かつて個人住宅屋根への太陽光発電設備の設置件数が急増した時期には、全国で毎年1~2名の転落による死亡事故が発生していました。

近年、死亡事故は以前に比べて減少したとはいえ、転落事故は相変わらず一定数発生しており、太陽光発電設備の施工、O&M作業における安全対策・事故防止策はまだまだ万全とは言えません。

屋根の上の作業は「傾斜角度がきつい」「屋根の材質が滑りやすい」という状況に加え、作業員が「パネルを踏んではいけない」「屋根を傷つけてはいけない」といった点に注意を払わないといけないため、一般的な建設現場などの作業に比べ、作業員の転落、落下事故のリスクが非常に高く、まさに命がけの作業です。
角度のある斜面にパネルが設置されている

角度のある斜面にパネルが設置されている

また、作業員の足を滑らせる原因がもうひとつあります。それは「コーキング剤」です。パネルの架台を屋根に固定するときに支持金具周辺に「コーキング剤」(気密性や防水性を保持するための充填剤)を塗るのですが、このコーキング剤が乾いて固まるまでにはかなり時間がかかります。夏季であれば早くて30分程度ですが、冬季は固まるまでに2時間以上かかる場合があります。

落下リスクの高い屋根では、「ハーネス型安全帯」を

こうした転倒・転落事故を防止するために様々な面で防止策を講じる必要がありますが、最も有効な転落防止策は「安全帯」(高所作業を行う場合に使用する命綱付きベルト)の装着です。
落下防止用の安全帯には様々な種類がありますが、作業員は前述のように屋根の上という転落リスクの高い環境で作業を行うため、一般の建築現場で使われる安全帯とは異なる、屋根上作業に適した安全帯を使用することをお勧めします。

一般的な建築現場で使われている安全帯の多くは、安全のためにロープの長さが、一定の長さ以上は伸びない仕様になっています。しかしそうした安全帯では、屋根の上で作業するときに上手く身動きがとれません。そこで、いろいろなメーカーが太陽光発電の作業専用の、滑車がついていてロープが伸び縮みするタイプのものを販売しており、現在それが広く使われています。レスキュー隊員やクライミングをする人が使っている、伸縮性とクッション性を重視した「ハーネス」と同じようなタイプのものです。
安全に気を付けて作業を進める

安全に気を付けて作業を進める

via Photo by U.S. Army Environmental Command via Visual Hunt / CC BY
屋根の上での作業において、こうした伸び縮みするタイプの「ハーネス型安全帯」が適している理由は、単に作業がしやすいというだけではありません。ロープの長さが固定されている安全帯を腰に付けていると、もし転落した場合、落下の衝撃によるロープの締め付けで腰の骨が折れてしまうなど大怪我につながる危険性があるからです。ロープが伸び縮みすれば、そうした怪我を防ぐことができます。

「安全帯を固定する場所がない」という根本的な問題

屋根の上の作業で「安全帯」を使用する場合に、ひとつ大きな問題があります。それは、そもそも「安全帯」の親綱を固定する(引っ掛ける)場所が屋根の上にない、ということです。ほとんどの作業者はパネルの架台に引っ掛けるなどして作業していますが、架台はもともと安全帯を引っ掛ける構造にはなっておらず、大きな負荷がかかることも想定していないので、無理に引っ掛けると架台やパネが損傷しかねません。

屋根に安全帯の親綱を固定するための支柱や金具などを取り付ける、という方法もありますが、そのためにボルトなどで屋根に穴をあけなければならないため、多くの家主さんは嫌がります。一部のメーカーから、屋根を傷つけずに親綱を張れる機材なども販売されていますが、ややコストが高いせいもあり、あまり普及はしていないようです。
また一般的な建築現場のように「足場」を組んで作業する、という方法もありますが、やはり時間とコストかかるため、実際の作業現場ではあまりこの方法は使われていないのが実情です

早急に整備すべき「安全基準」

現在、こうした「安全帯」使用の問題も含め、太陽光設備施工時、O&Mにおける安全対策には様々な課題が山積しています。最も大きな問題は、安全対策に関して「明確なルールが定められていない」ということです。施工業者やO&M業者は、一般的な工事業の作業員として安全衛生法などには準拠して作業を行っているのですが、会社や作業員ごとにみな独自の方法・ツールを使って安全対策をとっており、安全基準が明確に定まっていないのです。また、中にはまったく安全対策をとっていない場合もあり、こうした安全基準の緩さ、曖昧さが作業時の事故発生のリスクを高めてしまっています。
安全基準づくりが必要になっている

安全基準づくりが必要になっている

via Photo via Visualhunt.com
このように、作業の安全に関する規定が中途半端になってしまっているひとつの要因として、太陽光発電における施工やメンテナンスが「電気事業分野の仕事なのか、建築事業分野の仕事なのか」が曖昧になっている、ということがあります。電気事業と建築事業では安全管理に関するルールや認可の基準、方法などが異なるからです。
そうした曖昧な部分を早急にクリアにして、太陽光発電事業にも明確な安全基準を定めることが急務であり、この基準整備はこれからのO&M事業の発展にも大きく関わってくる重要な課題と言えるでしょう。

今回お話した「安全帯」だけでなく、作業員が身につけるヘルメット、作業着、手袋、靴などの装備、また梯子(スライダー)などの作業用器具や作業方法に関しても、安全のための明確な基準が定められていません。
一歩間違えば感電や転落による死亡事故にもつながる太陽光発電の施工とO&M関連作業。作業を請け負う会社や作業員自身が、自分たちの身の安全を守るために注意、工夫するだけでなく、国や業界全体がリードして明確な安全対策基準の整備を進めることが求められています。
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