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2017年1月24日 更新

【知られざる太陽光発電業界の“光と闇”・第2回】トラブルを引き起こす3大要因。その裏に潜む根本原因を探る!

近年、再生可能エネルギーの雄として脚光を浴びる「太陽光発電」。「屋根にパネルを付けるだけで手軽に稼げる」「余っている土地を利用した太陽光発電を投資対象に」と、気軽に始められるビジネスとしても注目を集めている。しかしここに来て、太陽光発電関連企業の倒産が急増しているとも言われる。太陽光発電業界はこれからどうなっていくのだろうか?

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【知られざる太陽光発電業界の“光と闇”・第2回】トラブルを引き起こす3大要因。その裏に潜む根本原因を探る!
本記事は知的好奇心をくすぐる読み物サイト・ビブリオンの提供で掲載しています
連載第2回では、近年急増している「太陽光発電用の機器に関するトラブル」と、その背景に潜む根本的な問題について解説する。
解説:太陽光発電検査協会理事・技術顧問/O&M Japan編集長 清水拓也

太陽光モジュールのトラブル「3大要因」とは?

――近年、太陽光パネル(太陽光モジュール)を取り付けた後に、様々なトラブルが発生する、という事例が増えているようですが、具体的にどんなトラブルが発生しているんですか?

「一度取り付けてしまえばあとはメンテナンスの必要はありません」とメーカーや販売・施工会社から言われて太陽光モジュールを取り付けたものの、その後様々な不具合が発生する、という例は確かに増えています。「これじゃ話が違うじゃないか」ということになり、なかには裁判沙汰にまでなってしまうケースもありますね。

過去に裁判になったケースのひとつでは「光害」によるトラブルがあります。つまり、太陽光パネルに当たった光が乱反射を起こして、その光が近隣に被害を及ぼすというものです。
他にも製品不良・施工不備による焼損事故や、施工不備・設計不備からなるパネルの飛散事故などがあります。
落雷によりパネルの焼損事故も起こる

落雷によりパネルの焼損事故も起こる

――そうした太陽光モジュールにかかわるトラブルが発生する根本原因はどのあたりにあるのでしょうか?

太陽光モジュールに不具合が発生する原因は主に3つあります。1つは製品自体の不備や欠陥。モジュール自体の製品クオリティの問題です。2つ目は天災など外的要因。台風や雪害、風害、水害などの自然災害ですね。3つ目は人的問題。つまり、太陽光発電システムの施工に問題がある場合です。

私は、まずは3つ目の「施工」に関する問題について根本的な対応策を打ち出して早急に解決すべきだと考えています。
太陽光発電はある種ブームのように短期間で急速に広がったので、設置に関する適正な基準やルールの整備はもとより、実際に設置する作業員の技術的スキルアップなどが、かなりおろそかなんです。

甘い、施工技術者向け研修の実態

ここで、実際に太陽光モジュールの取り付け工事がどのように行われているかを簡単にお話しておきましょう。
太陽光モジュールは国内メーカー・国外メーカーのどちらでもそうなんですが、全国各地で施工業者さんを対象に、施工方法を指導する研修を行っています。その研修が、だいたいどこのメーカーも平均2日間くらいしかありません。そしてその研修を受けたら「はい、あなた合格です」ということになって、正式な施工業者としての認定書(施工ID)を渡されるんです。

正直に言うとその2日間の講習ってすごく内容が非常に薄いんですよ。単に各種機器を屋根に取り付ける作業方法を教えるだけで、太陽光モジュールの根本的な仕組みや技術的知識など、本来施工業者に最低限必要な電気的知識または構造的知識などの基本が身につかないまま世に送り出されているんです。
そんなことをしていたら、当然いくらでも事故やトラブルは起きますよ。充分なトレーニングを受けず、本当に必要な知識やスキルをもっていない人たちが施工しているんですから。

――知りませんでした。それは大きな問題ですね。

想像してみてください。普段皆さんが乗っている車は、長年にわたる厳しいトレーニングや専門的な学術を経て資格を取得、高度なスキルを有した技術者たちが組み立て、何かトラブルがあれば、やはりきちんとした資格を持った整備士が対応してくれる。
住宅にしても、それなりの狭き門をくぐりぬけて、明確な基準のもとに資格を取った設計士さんや建築士さん、施工業者さんたちが建てているわけです。

それに比べて、われわれ太陽光発電の業界は、とても緩い資格制度の中で管理されている。しかも、いざトラブルが起きたとき、じゃあ修理・メンテナンスしましょうと言っても、メンテナンス自体に明確なくくりやマニュアルや基準もなく、皆がみんな好き勝手やっているような状態です。
結局、この業界はトラブルに対して適切に対処もできず、トラブルを未然に防げる状態もないんです。
設置時の技術スキルが課題になっている

設置時の技術スキルが課題になっている

太陽光発電業界の不可思議な縮図

――じゃあ今、そのあたりのマニュアルや基準、法律の整備は進んでいるんですか?

少しずつ動きつつはあるんですが、以前にもお話したように、そもそも太陽光発電事業や設備行政管轄や法規・ガイドラインや様々な基準が非常に曖昧なんです。

一番大きい管理枠組みで言うと経済産業省が管轄省庁で、ルールに大きく関わっている団体としては、中心的存在である「JPEA(太陽光発電協会)」や「JEMA(日本電気工業会)」などがあります。他にも技術的なサポートとしては「PVTEC(太陽光発電技術研究組合)」や「JSES(日本太陽エネルギー学会)」などがあります。
ただ実際の業務の中身は建築の分野、電気の分野と分かれているので、建築の分野なら「日本建築学会」とか、地上構造物の風荷重や振動など、いわゆる風工学を専門とする「風工学会」。電気に関することなら「電気設備学会」や「JET(電気安全環境研究所)」など、数え上げれば太陽光発電に関わるいろんな団体がいくらでもあります。

このように、いろんな団体が少しずつ様々な専門分野に関わっているという、この業界特有のシンプルなようで複雑な縮図があって、誰も業界全体の絵を明確に描けなくなってしまっているように感じます。さすがに近年のトラブル急増な状況を放っておけない、ということでやっと行政側も業界全体の整備に動き出したんです。
行政も法の整備に動き出した

行政も法の整備に動き出した

リスキーな太陽光発電を始める人が知っておくべきこと

――そんな状況の中、これから太陽光をやってみよう、太陽光モジュールを取り付けてみようと考えている人はどうしたらいいんですか? ひとまず様子を見たほうがいい?

少し突き放す言い方をしますが、物件、つまり太陽光モジュールを設置する場所が太陽光発電にとって好条件で、資金にもゆとりがあって事業として十分成り立つ、と判断できるのなら、太陽光事業者としてやってみてもよいと思います。
ただ、本当にやるのでれば、個人でも法人でもそうですが、事業者として「自分たちでリスクを負う」という覚悟が必要になってくると思います。車を運転するのに事故リスクがつきまとうのと同じです。

私がこの業界で問題視しているのは、先にお話したようなメーカーや施工業者の問題だけでなく、例えば大規模に太陽光モジュールを設置してメガソーラー運用をはじめようという事業者さんが、自身で事業リスクを背負わないということなんです。
メガソーラー(1MW)を持っている事業者さんって、大体年間4000万円近くのお金が入ってくるんです。だから、放っておいても儲かるくらいの認識しかなくて、そもそも自分が国のエネルギー政策を支えるとか「発電所を持ってるんだ」という意識や重い認識もなければ、そこで発生するリスクを自分で負おうという意識もない。

現在、法律も規定も定まってない、安全対策も保守管理の義務もされてない、という状況にあるということは、この事業がリスキーな事業であり、そのリスクは少なからず事業者個人が背負わないと駄目だということです。ところが今は、事業者さんからすると「設置は施工会社さんや電気屋さんに頼んでるから、自分たちはリスクを負う必要ないよね」という認識なんです。

――じゃあ一体誰がリスクを負うことになるんでしょうか?

太陽光発電が怖いのは、実は事業リスクをメーカーも、販売会社、施工会社も、当の事業者さんも、誰も大きく背負ってないということなんです。もちろん全てとはいいませんが…。電力会社も含めて、結局ほとんどが他人事なんですよ。太陽光は国自体がすごく後押ししてバックアップしている大事業にもかかわらず、このように皆が他人事で動いている状況下で、ただ無計画に広がっていっている。じゃあトラブルに対して結局、誰が最後にケツを拭くのかという話になってしまっている。

太陽光発電事業の問題点は、行政、電力会社、団体、メーカー、販売・施工会社、事業者など、様々な立場の人々が各々の思惑で考え動いているという点であり、そこを今後どう統制していくか。それが私たちに課せられた重要な課題なのです。
自分自身もこの課題に真摯に取り組み、業界をもっともっと良くしていこうと思います。
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