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2017年3月28日 更新

物件事業者こそ知っておくべき「太陽光発電物件に欠如する図面設計という問題」

モジュールや電気系統機器の保守点検にとって欠かせない、設備全体の配置図や電気系統の全体構造が明記された「図面」が存在しないという現状。その背景・原因とともに、法制度の必要性について考えます。

O&M japan編集部
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物件事業者こそ知っておくべき「太陽光発電物件に欠如する図面設計という問題」

太陽光発電設備には「図面」がない?

住宅やビルなどの建築物、建造物には必ず「設計図」や「構造図」「電気系統図」など図面というものがあります。こうした図面は、その建築物のメンテナンス作業時に必ず必要となってくるものです。ところが、太陽光発電施設・設備の多くには構造図や電気系統図などの図面というものが存在しないのをご存知でしょうか。

「そんな馬鹿な!」と思われるかもしれませんが、O&M事業者の作業員が設備のメンテナンスのために現場へ行き、作業依頼者(発電事業者)に「図面か施工関連の資料を見せてもらえますか?」と聞くと、ほとんどの場合「そんなものは持っていません(見たことがありません)」という答えが返ってくるのです。

当然、モジュールやパワーコンディショナーなど個々の機器に関する簡単な取り扱い説明書はあるのですが、設備全体の構造や電気系統が分かる肝心の「図面」がないのです。そもそも発電事業者の方々に、施工時の「図面」があってしかるべき、という認識すらありません。
施工時の図面がないケースもある

施工時の図面がないケースもある

「図面」がないとどういうことが起きるのか?

個人住宅だけでなく、メガソーラーなどの大規模設備の多くにもメンテナンスに必要な図面が存在しないのですが、こうした基本的な図面がないと困るのはO&M事業者です。
メガソーラーなど大規模な野立て物件の場合、現場周辺の詳細な地図や区画内にどうモジュールが設置されているか、といった図面すらない場合があります。
区画ごとに所有者が異なる分譲型メガソーラーの場合、O&M事業者の作業員が発電事業者の方から点検の依頼を受けて現場に行っても、図面がないためにどの区画のどのモジュールを点検すればよいか、ということさえ分からないことがあるのです。

また電気系統の図面がないと、各種機器の点検作業に大きな支障をきたします。
O&M事業者の作業員が電気系統の点検を行うとき、配線図がないために個々の作業員の独自判断で点検を行うことがあります。そうなると次回、メンテナンスに来た別の作業員も「施工時の配置・配線」がどうなっていたのかが分からなく、適正な作業ができないという悪循環を起こしているのです。
場合によっては、作業者が本来触ってはいけない箇所を触ってしまったり、配線を変えてはいけないところを変えてしまい、新たな事故を発生させる可能性があります。
図面がないと点検に支障をきたす

図面がないと点検に支障をきたす

欠如している「メンテナンス」という発想

では、なぜ太陽光発電設備には「図面」がないのでしょうか。
その要因は、そもそも多くの事業関係者に、「施工後に設備のメンテナンスが必要になってくる」「メンテナンスのことを考えた機器の構造設計が必要である」という発想(設計思想)がないことです。
屋根設置型、野立て型に関わらず、施工時にきちんとメンテナンスのことを考えて施工するのが本来の太陽光発電設備の在り方です。しかし多くの人は、「太陽光発電設備の施工は、架台とモジュールを屋根の適当な場所にポンと乗せるだけ。空いている土地に設置するだけ」としか考えておらず、詳細な施工図面などは必要がないと考えているのです。

実は、モジュールメーカーの多くは、「こういう形状、こういう傾斜の屋根に取り付ける場合は、ここに〇センチの通路スペース(メンテナンススペース)を空けておいてください」といった仕様書を作成して配布しています。物件によってはメンテンナススペースを確保しないと、消防法に抵触します。しかし一部の販売業者や施工業者はそうした指導を守らず、オーナーの方に対して「少しでも多く発電するように、屋根のギリギリまでパネルを乗せましょう」と営業して不適切な施工を行っているのです。
最近はパネルと屋根が一体型になった製品も多くあり、O&M業界で問題視され始めています。今後、住宅のスマートハウス化が急速に進んでいくことを考えると、こうした製品に関しては早めに規制を設けるなどの対応策が必要でしょう。

モジュールだけでなく、パワーコンディショナーなど電気関連機器にも「点検などメンテナンスのことを考えて製品設計すべき」という発想が欠けています。
パワーコンディショナーや接続箱の点検は、通常カバーを開けて特殊な計測器で端子や回路をひとつ1つ細かく計測していくのですが、メーカー(主に海外メーカー)によっては、端子の部分が隠蔽されていて、非常に点検作業がしにくくなっているものがあります。こうした構造のパワーコンディショナーは、点検作業のために無理に配線を動かす必要があり、それによって感電やスパークなどの事故が発生する危険性が増します。
細かい点検作業が生じている

細かい点検作業が生じている

こうした海外メーカーには経済産業省からも「点検ができるような構造にしてください」といった指導がされていますが、海外の基準と国内基準の考え方の相違などもあり基準・規格統一がなされておらず、O&M事業者は非常に困っている、というのが実情です。

責任の範囲、管轄領域の線引きが曖昧な太陽光発電業界

メンテナンスを想定した図面がない、製品自体が保守点検作業を考慮した構造設計になっていない。今、太陽光発電業界ではこうした状況が当たり前になっており、このような状況の中で、現場の作業員は様々なO&M作業を手探りで行わなければなりません。このようなメンテナンスでは二次災害を引き起こしかねません。これは安全面や作業効率だけでなく、収益面などビジネス的視点から見てもO&M業界にとって非常に大きな問題です。

こうした状況については、行政側も協会や団体もよく理解しているのですが、「施工開始時の施工図面提出の義務化」などの法制化、ルール作りに関しては今のところ目だった動きがありません。
こうした業界全体の法整備に関する問題は、そもそも太陽光発電設備が「電気工作物なのか、建築・構造物なのか」「どこまでが経済産業省の管轄で、どこまでが国土交通省の管轄なのか」「どこがメーカーの責任でどこが販売店や施工業者の責任か」(業務範疇)といったことが非常に曖昧になっているということも関係しています。すべてにおいて責任範囲が曖昧なのです。これは太陽光発電業界、特にO&M業界における根本的かつ深刻な問題です。

太陽光発電事業におけるO&M事業は、まだまだ始まったばかりの歴史の浅い事業です。したがって、業界全体の知見も少なければ、体制もまだまだ確立されていません。それにも関わらず、各々が勝手にビジネス化して自分たちの事業を展開しているのです。これはO&M業界の行く末を考えると非常に懸念される状況と言わざるをえません。
行政、団体・協会、メーカー、発電事業者、販売・施工評者、O&M業者が互いに連携・協力しながら、O&M業界の健全な発展のためにもっと積極的に、ガイドライン作りと法整備を進めていく。私たちには今、そうした意思と姿勢、そして行動が必要とされています。
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