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2017年4月25日 更新

【知られざる太陽光発電業界の“光と闇”・第3回】険しい、ガイドラインづくりと義務化への道のり

近年、再生可能エネルギーの雄として脚光を浴びる「太陽光発電」。「屋根にパネルを付けるだけで手軽に稼げる」「余っている土地を利用した太陽光発電を投資対象に」と、気軽に始められるビジネスとしても注目を集めている。しかしここに来て、太陽光発電関連企業の倒産が急増しているとも言われる。太陽光発電業界はこれからどうなっていくのだろうか?

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【知られざる太陽光発電業界の“光と闇”・第3回】険しい、ガイドラインづくりと義務化への道のり
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連載第3回では、順次発表が進んでいる「ガイドラインづくり」や「法整備・義務化」の問題について解説する。
解説:太陽光発電検査協会理事・技術顧問/O&M Japan編集長 清水拓也

全国で増え始めた太陽光発電機器の重大事故

―― 以前、「太陽光発電における業界ルールや、保守点検におけるガイドラインの整備が必要」というお話をうかがいましたが、今後、業界としてどのようにガイドラインづくりをしていくのでしょうか?

太陽光発電の業界内のルールやガイドラインづくりの必要性に対する意識は、業界全体としてまだまだ低く、O&M(運転管理・保守点検)に関しても義務化されていません。でも将来的には太陽光発電関連の機器も、クルマの車検のような定期点検を義務化する方向に持っていくべきだと私は考えています。

太陽光発電の場合、今はまだ「整備・点検にあまり余分なお金を使いたくない」と考えるオーナー(事業者)さんが多いんですが、なぜそういう発想になるかというと、そもそも太陽光発電を行う目的意識に要因があるのだと感じています。つまり「太陽光発電が電力事業であり、自分が電気設備の運用をしているんだ」という意識を持っているオーナーさんが少ないということです。

クルマの場合は故障してしまったら生活や仕事に直接影響が出る、場合によっては事故につながってしまうという意識があるので、皆しっかりと保守点検や整備を行います。でも太陽光発電に対しては、皆さん大きな誤解をしているというか、「放っておいても収益が出るただの収益物件」という解釈の人が多いんです。
太陽光発電の点検はまだ義務化されていない

太陽光発電の点検はまだ義務化されていない

―― あとはクルマと違って、トラブルや事故が起きてもそれほど重大なことにはならない、ましてや命に関わるようなことはないだろう、といった意識もあるのではないでしょうか

そうですね。確かにこれまでは重大なトラブルといっても、「焼損事故」(機器が発火して燃えてしまう事故)などでした。もしそうした事故が起こったとしても、ただ機器を交換して、オーナーさんの自己責任で済むような範疇だった。だから業界も保守点検のガイドライン整備に関しては、あまり積極的に動いてこなかったんです

でも最近になって、行政が新たなガイドライン作りや、いろんな面で半義務化のような方向に動き始めた。その理由は、焼損事故以上の重大な事故が増えてきたからです。
具体的にどんな事故かというと、たとえば架台(機器を支える構造物)など基礎構造部分に不備があって、台風や大雨などによって太陽光発電設備機器が飛んだり流れたりして、民家や車などを損壊させる、といった事故です。こうした深刻な被害が今全国で増え始めているんです。

こうした事故も、最初は天災の一部という解釈で多少は目をつぶられていたんですが、近年、こうした事故は、太陽光発電機器の設置方法やメンテナンスの問題ではないか、ということになり、経済産業省も「このままにしておいたらまずい」ということで、O&Mのガイドラインづくりに動き始めたということなんです。

徐々に進められていくガイドラインづくりと義務化

―― ひと口にガイドラインづくりと言っても、機器の設置や保守点検面だけでなく、太陽光発電に関する様々な部分、いろんな視点で考えていかなければならないですよね。

そのとおりです。たとえば、今まではどなたでも比較的簡単に「この土地に太陽光発電を設置します」と言って申請を出すことができました。そうなると結果的にブローカー的な人や会社が、太陽光発電のための土地を自由に売買する、といったことが驚くぐらい増大しました。今後はそういったことも取り締まっていく必要があるでしょう。そうした面での法整備とO&Mのガイドラインづくり、安全対策のための法整備などをすべてリンクさせながら、徐々に業界全体のルールを整備していく必要があるでしょうね。

ガイドラインというのは言葉通り、あくまで「指針」なんですが、行政側としては、それを守らなければ設備認定取り消し、場合によっては運用停止にしよう、という話も出ています。要は、初めはガイドラインとして「ここを基準にしてください」という指針を作って、そこに行政処分も軽度なものから入れていく。そして最終的には義務化にもっていこう、という方針ですね。ですから、O&Mも含めた諸問題に関する義務化は、できるだけ皆にストレスがないようにじわじわと移行していくのでは、と思っています。
ガイドラインの整備が進む

ガイドラインの整備が進む

安全面にも影響をおよぼす「機器の規格統一」問題

―― 機器の施工時、その後の保守点検におけるガイドラインも重要ですが、クルマや電化製品のように、メーカーが製品を作る段階で、ある程度の規格や基準が統一されていないと問題が起きるんじゃないでしょうか?

今まさに、私も参加している団体、学会でもその話が出ています。太陽光発電におけるガイドラインを構築する上で、「そもそも製品の製造・設計に関する規格や安全面に関する基準がなさすぎだ」と。たとえば太陽光パネル1枚とっても、縦横のサイズとか商品の仕様など様々な部分が各メーカーによってバラバラです。

「技術開発、製品開発上バラバラになってしまうのは仕方ない」という意見もありますが、安全対策の観点から考えると、もっと個々の製品の規格や仕様が統一されている必要があるんです。

実際、私たちがO&Mで使っている検査機器でも、検査できる製品とできない製品があります。あまりにもメーカー別、製品別の仕様や構造が違い過ぎるために、そういうことになってしまっている。これも太陽光発電業界が抱える大きな問題であって、学会関連、研究者の間でもそこが困り種になっています。

いずれにせよ、太陽光発電業界は、製品の規格統一、施工や運用・保守点検面でのガイドライン、事業面での法規整備など、様々な面で後追いになってしまっています。課題はたくさんあるにもかかわらず、メーカー、販売会社、事業者、研究団体など様々な思惑がからみあって、なかなか業界全体が一致団結して考えていこう、という機運が高まらないのが現実です。

業界の現状を知らない業界関係者たち

―― 太陽光発電業界におけるガイドラインづくやルール作りにおいて、まだまったく手がつけられていない分野などはあるのですか?

どの分野も少しずつ手はつけられています。いろんな技術者、研究者、開発者、行政の方も含めてみんなが一生懸命に取り組んでいるんですが、さっきお話したように、やはりそれぞれの考え方、思惑があるので、なかなかそこがスムーズに進まず、やや中途半端な状態になってしまっている面がありますね。

あと私が大きな問題として捉えているのは、そもそもこの業界にこうした根本的な問題がたくさんあること自体を認識していない人が意外と多いことです。行政研究機関や技術団体だけが問題を認識して取り組んでいる一方で、太陽光発電事業を行っている民間企業の人たち、特に管理職クラスの方々の多くがこうした問題についてまったく認識していない。これは業界にとって危機的状況と言わざるを得ません。

経産省もそういった状況を薄々分かっていて、自分たちの活動にできるだけ民間企業を多く入れていこうと考えているようですが、今までそうしたやり方をしたことがなかった為か、やや迷走している感は否めません。重要な情報も民間にはスムーズに流れておらず、正直、あまり上手くいっているとは言えませんね。

そういう状況なので、私がセミナーなどで、ここまでお話してきたような情報をお伝えすると、皆さん非常に驚かれます。もっと皆が知っておくべき情報を業界全体に伝えていく必要性を強く感じていますね。太陽光発電業界に関する正しい情報がもっときちんと浸透して広がれば、皆さん自分ごととして諸問題を真剣に考えるようになるでしょうし、民間同士が手をつないで一緒にやりましょうよ、という機運が生まれるんじゃないでしょうか。
太陽光発電業界に関わる人々の、情報の共有と連携が重要

太陽光発電業界に関わる人々の、情報の共有と連携が重要

―― そういった意味で、清水さんはこの業界の多くの方たちから、太陽光発電業界のオピニオンリーダーとして期待されているのではないでしょうか?

期待されているかどうかは分かりませんが、出来る限り頑張りたいと思います。今はO&Mのガイドライン構築、義務化、様々な新しい制度導入などを中心に取り組んでいますが、それらはすべて、安全対策の強化の為であったり、業界の皆さんの収益(ビジネス)を守ることが最終的な目標です。いろんな業界団体、技術団体、研究機関、行政の協力のもと、安全とビジネス両面のバランスをとりながら、太陽光発電業界全体をよりよい方向に持っていくことができれば嬉しい限りです。

資源エネルギー庁が「PV100年構想」というものを掲げていますが、日本の太陽光発電(PV)事業を100年先まで続く事業、産業にしたい。道のりは険しいでしょうが、そんな想いを持って皆さんと一緒に、一歩一歩進んでいけたらと思っています。
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